登るためにダイエット、したことありますか?
体が重いと感じたクライマーなら、一度はダイエットをしたことがあると思います。
クライマーにとって”体を軽くすること”は、数ある上達法のなかでも一番手っ取り早く、わかりやすい方法ではないでしょうか。
もし大会やコンペ、冬の外岩シーズンで成果を出そうと思った場合、そこに向けて筋肉を落とさず、脂肪を落とすという高度な体重管理が必要です。
目標がなくても普段から体重管理ができていれば、いざ「目標が決まった!」というときに少しの努力で理想の体重に調整することが可能となります。
この記事、次の記事では続けて「ダイエットしたい方」に向けて記事を書こうと思います。
この記事では、「太る理由」を一緒に考えていけたらと思います。
こんな悩みや疑問を抱えている人はぜひ最後までお読みください↓
- 最近体重が増えてきた…体が重い…
- 食欲が抑えられない…
- 炭水化物をどれくらい食べて良いのかわからない…
- アルコールは飲んでも良いの…?
- ダイエットしたい…
なぜ体重が増えるのか(基本編)
人はなぜ体重が増えるのでしょうか…
この項で話すのは、体脂肪ではなくて”筋肉も含めた”体重についてです。
脂肪が増えれば体重が増えますが、筋肉がついても体重は増えます。
体重の増減は基本的に、エネルギーの収支によって左右されます。
「1日の摂取エネルギー>1日の消費エネルギー」というように摂取エネルギーの方が多い場合、体重は増加します。
「1日の摂取エネルギー<1日の消費エネルギー」このように消費エネルギーの方が多い場合、体重は減少するのです。
摂取エネルギーには食事以外で蓄える方法はないですが、消費エネルギーには3種類の消費方法があります。
基礎代謝 | 約60% | 生命維持に必要なエネルギー代謝。内臓の活動や代謝回転など、何もしなくても使われるエネルギーで、筋肉量が増加すると代謝量が上がる。 |
生活活動代謝 | 約30% | 日常生活、スポーツなどで使うエネルギー代謝。身体を動かすときに使われるエネルギーで、運動量が上がることで代謝量も上がる。 |
食事誘発性熱生産 | 約10% | 食べた物を消化吸収するための代謝。タンパク質の摂取量を増やすことで代謝量が上がる。 |
筋肉になるカロリーと体脂肪になるカロリーがある
ダイエットと聞いてまず、頭に思い浮かべるのは「カロリー計算」ではないでしょうか。
一般男性の平均必要カロリー量は2650kcal。
「平均必要カロリー量より摂取カロリーを少なくすれば痩せる、多くすれば太る」という考え方が一般的です。間違ってはいません。
しかし、カロリー計算のみで体脂肪が落ちるかというとそうではありませんし、無理にカロリーを減らせば同時に筋肉も落としてしまいます。
糖質、脂質、タンパク質にはそれぞれカロリーがありますが、その中でも人はタンパク質の割合を高めると体脂肪が減るのです。
なぜなら、食事誘発性体熱産生によるカロリー消費は糖質や脂質よりも約6倍と非常に高く、さらにタンパク質をしっかり摂取することで筋肉量が増え、基礎代謝も上がります。
これは後述しますが、タンパク質には食欲を抑える効果があります。
摂取カロリー量が増えてもそれが筋肉の合成に使われれば、カロリーオーバーしても体脂肪とならないため問題ありません、逆に糖質には中毒性がありますし、使われないエネルギーは体脂肪として蓄えられやすいのです。
これらのことから、カロリーの内容(糖質、脂質、タンパク質)が把握できていない、カロリー計算ダイエットには意味がありません。
というのが僕の結論です。
食欲が抑えられない理由
「食べたくなるんだよなぁ」とか「食べたいの我慢できない!」という方は自制心がなかったり、心が弱いわけではなく「ホルモン」のせいかもしれません。
まず、「グレリン」というホルモンがあり、これは食欲を増進させます。
このホルモンは胃で作られ、睡眠時間が短かい場合や空腹時、レプチンが減少した時に多くのグレリンを分泌し、病気をした後などは分泌が減少するため食欲が落ちます。
参考文献:第124回日本医学会シンポジウムPDF
反対に、「レプチン」というホルモンは食欲を抑えるホルモンとなりますが、これは次の記事で説明します。
他には「コルチゾール」というホルモンも脂肪を溜め込みやすくします。
ストレスを受けたときに、脳からの刺激を受けて分泌が増えることから「ストレスホルモン」とも呼ばれています。
コルチゾールが増えるのは睡眠不足や緊張を感じている時、アルコールを摂取した場合などです。
もともと生き物が生命の危機に直面した時に分泌され、血圧や脈拍を上昇させて身を守るためのホルモンでした。
しかし、現代のように四六時中のストレスに晒されるとコルチゾールが増えすぎてしまい、成長ホルモンの働きを阻害して基礎代謝を低下させます。
さらにインスリンの分泌も増進されていしまうため、脂肪が落ちにくく、食べた物が脂肪になりやすくなってしまうのです。
「ストレス太り」とはこの「コルチゾール」が作用した結果なのです。
炭水化物は太るのか
皆さんもよく聞く「炭水化物」。
ごはん、パン、パスタ…
これらの「主食」と呼ばれる食べ物は、炭水化物をたくさん含んでいます。
炭水化物というのは糖質+食物繊維の総称であり、この項ではその中の糖質を詳しく説明致します。
糖質不足は筋肉を分解する
食事で摂取した糖質は、まずブドウ糖(グルコース)に分解されます。
ブドウ糖(グルコース)の到着点は2箇所あり、一方は筋肉に、もう一方は肝臓に向かいます。
筋肉に到着したブドウ糖(グルコース)は筋グリコーゲンとなり、肝臓に到着したブドウ糖(グルコース)は肝グリコーゲンとなります。
筋グリコーゲンは、筋肉のエネルギーとなります。
肝グリコーゲンは、血糖値が低いときに血液に放出されます。
体を動かすことで筋グリコーゲンが消費され、不足すると肝グリコーゲンから補うのですが、その時、筋肉のアミノ酸も利用されるため筋肉が分解されてしまう「糖新生」が起こります。
肝グリコーゲンが不足すると血糖値が下がり、空腹感を感じるようになります。
糖新生とは
僕たちの体は糖質が足りないと、脳が働かなくなっったり、動けなくなったりします。
特に糖質不足で問題になるのは、赤血球が糖質を唯一のエネルギー源としていること。
体はこのような糖質不足による弊害をなくそうと、体内で新しく糖質を合成する機能が備わっています。
糖質が足りない場合、筋肉や脂肪を分解して、肝臓でグルコースを作り血中に流れます。
それが「糖新生」。
糖質不足になればなるほど糖新生は活発になり、足りない糖質を補おうとするため筋肉は分解されていきます。
筋肉を落としてでも体重を減らすダイエットをするなら、糖質制限ダイエットがおすすめです。
糖新生の怖いところは、自分の筋肉を犠牲にしてエネルギー得ていることです。
果物の罠
果物の中の糖質はなんとなく体にいいもののようなイメージをしている方は多いかと思います。
果物の糖質は「果糖(ガラクトース)」といい、痛風の原因や脂肪肝の誘発をします。
ブドウ糖(グルコース)と違い、果糖(ガラクトース)は吸収されると肝臓で代謝されるので、筋グリコーゲンにはならず筋肉のエネルギーとはなりません。
果物そのものが悪というわけではなく、砂糖(ブドウ糖+果糖)や果糖ブドウ糖液糖の摂りすぎが体に悪いのです。
糖質の過剰摂取
糖質を摂取すると血糖値が上がり、インスリンというホルモンが膵臓から分泌されます。
インスリンには血糖値を正常な値に保つ働きがあり、同時にアミノ酸を筋肉に送り込む作用や、脂肪の合成を促進し体脂肪を増やしてしまう作用もあります。
糖質を一気に大量に摂取したり、空腹の状態で摂取したりすることで血糖値が急激に上がり、それに伴って過剰にインスリンが分泌されてしまうのです…
血糖値の急上昇が起こればインスリンが大量に分泌され、血糖値の急降下が起こり、空腹感や眠気をより強く感じます。
インスリンには血糖値を下げる働きがあるが、脂肪も増やしてしまう作用がある。と覚えておいてください。
GI値とは
糖質を含む食べ物には、血糖値を上げやすいもの(高GI)と、血糖値を上げにくいもの(低GI)があります。
食パン、白米、じゃがいも、練乳、砂糖、はちみつなどは高GIで、血糖値が急上昇しますが、オールブラン、玄米、肉、チーズ、豆などは低GIのため、血糖値は緩やかに上昇します。
液体で摂取する、清涼飲料水などは血糖値を急激に上げるものの代表格です。
GI値の低いものを食べれば痩せるとよく聞きますが、これには語弊があって実際は「GI値の低いものを食べればインスリンが過剰分泌が起きないため、脂肪の合成が起こりにくく空腹感を感じにくい」というものが正しいと思います。
GI値が低くても大量に食べれば、インスリンは多く分泌されますのでご注意を。
PFCバランス(Protein,Fat,Carbohydrate)
糖質を抜くことは筋肉を分解させるというのを説明してきました。
では、糖質はどの程度摂ればいいのか…
厚生労働省によると、炭水化物58%、タンパク質17%、脂質25%が標準的な目安となっております。
この場合、一日の摂取カロリーが一般男性平均2650kcalとすると、炭水化物384g、タンパク質113g、脂質74gとなります。
ダイエットする時はタンパク質の割合を高めます。
タンパク質のカロリー比を30%以上にし、糖質と脂質の割合が少なくなることで食事誘発性体熱産生(消化吸収に使うエネルギー)が高くなります。
さらに、タンパク質に含まれるロイシンには、レプチンの働きを高めたり、体内エネルギーが増加していると感じさせることによる「食欲抑制効果」があります。
タンパク質30%、炭水化物45%、脂質25%にした場合、一日の食事のPFC摂取量はタンパク質198g、炭水化物298g、脂質74gとなります。
食事誘発性体熱産生は咀嚼が大きく関わっているので、プロテインよりも肉や魚などを積極的に食べたいところです。
足りない分をプロテイン等で補いましょう。
お酒(アルコール)
この項では、気になっている方も多いであろう、「お酒」のリスクについて説明していきたいと思います。
まずはじめに言っておかなければならないことは、アルコールには筋肉の分解を進行させ、脂肪を蓄えやすくする作用があります。
なぜ「アルコールを摂取すると筋肉が分解されるのか、脂肪が増えやすいのか」を次のリストで確認してください。
- コルチゾールの分泌増加
- テストステロンの分泌減少
- 脂肪合成酵素の活性化
- 筋タンパク質の合成反応減少
- 肝臓疲労、機能低下
- 生活サイクルが乱れる
このように、飲酒には脂肪を増やすリスクと、筋肉をつけにくくなるというリスクがあります。
①のコルチゾールはストレスホルモンで、筋肉の分解を促進させ食欲を増進し、②のテストステロンは筋肉を増やす効果のあるホルモンで、減少すると筋肉の合成反応が落ちます。
このように、飲酒とダイエットは相反する行為なのです。
とはいっても、お酒がないと生きていけないクライマーは多いかと思います。
そこで、アルコールとの上手な付き合い方の提案をします。
まず、1つ目に「お酒自体のカロリーを低くする」というもの。
ビールなどにはお酒自体に糖質が含まれているため、脂肪になりやすいのです。
そこで、ウイスキーや焼酎の蒸留酒や糖質ゼロのビール等にすることで、お酒自体からのカロリーは抑えることができます。
僕は、お酒自体のカロリーは誤差の範疇だと思っていますが…
2つ目は「お酒の量を減らす」こと
次に、お酒の量自体を減らそう、という提案です。
お酒の適量はどのくらいなんだろう…と思い、少し調べてみました。
厚生労働省によるお酒の適量は以下の通りです。
「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である。」
「飲酒量の単位」の項でも説明していますが、20gとは大体「ビール中ビン1本」「日本酒1合」「チュウハイ(7%)350mL缶1本」「ウィスキーダブル1杯」などに相当します。
引用: 厚生労働省 飲酒のガイドライン
ビール500mlで適量です。
しかも、この適量の数値は男性のもので、女性は2/3〜1/2程度の量が適度となるそうです!
皆さんが思っていた適度な飲酒量よりだいぶ少ないのではないでしょうか。
これ以上の飲酒は”過度な飲酒”となり、前述した筋分解と脂肪蓄積のリスクが増えていきます。
一回の飲酒量を減らすのも効果があると思いますが、飲む頻度を減らしてしまうというのも効果が出るはずです。
毎日飲んでいる方は、本気でクライミングしたあとは飲酒を控えたり、週に何回と決めてしまうのも手だと思います。
シーズン中は飲まない!ときっぱり決められると最高ですね。
3つ目は「つまみをヘルシーにする」こと。
飲酒をして太ってしまう方の大半は、この”つまみ”で太っています。
食べ合わせるものを少量にすることはもちろん、炭水化物や脂っこいものでなく、高タンパクなおつまみに変えることが必要です。
一番の負のスパイラルはアルコールを摂取し、酔うことで理性が効かなくなり、「このくらいなら大丈夫だ」と自分に甘くなることです。
それを高い頻度で続けば、痩せることはありません。
まとめ
体脂肪が増えるのには理由があります。
食べすぎだったり…ストレスだったり…TFCバランスが悪かったり…お酒、タバコ、運動不足…
この記事では「太る理由」として、カロリー計算の基本と、糖質について、お酒についてを説明しました。
- カロリー計算は、炭水化物、糖質、脂質の比率を計算できなければ筋肉も落としてしまう。
- 睡眠時間が少ないとグレリンが増え、食欲が増加する。
- ストレスを感じると成長ホルモンの分泌を阻害し、インスリンの分泌を増進する。
- 糖質が不足すると筋肉が分解される。
- 砂糖と果糖ブドウ糖液糖には注意する。
- 糖質の過剰摂取はインスリンの分泌を増進させ、脂肪を溜め込みやすくする。
- GI値の低いものを食べればインスリンの過剰分泌が起きない。
- ダイエットはタンパク質を増やすと良い。
- アルコールは筋肉の分解を進行させ、脂肪を蓄えやすくする。
これらのことが分かっていて気をつけることができれば、これ以上太ってしまうことはありません。
厳しい言い方をすれば、わかっていても行動できない人、続かない人はダイエットは成功しません。
…。
……。
あなたは行動できる人ですか?
次回の食事編の記事は「痩せ方について」を記事にしていきます。
参考書籍
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