弱さを知る強いクライマー

皆さんは自分の弱み、わかりますか?

もし、分からない方がいればそれはスランプ直前か、もうスランプに陥っている方だと思います。

なぜなら、自分が「得意だ」「これはもうできる」ということを繰り返していても、全体のパフォーマンスに与える影響は少ないからです。

苦手を放置することは、自分の苦手なムーブや苦手なホールドに足を引っ張られて、全体のパフォーマンスを落とすことにつながります。

例えば、ランジやコーディネーションなどの動的な動き、強傾斜が得意で、目を見張るほどの保持力の持ち主がいたとします。

クライミングジムでは登れない課題なんてありません。

しかし、このクライマーはマントリングが苦手でずっと放置していました。

このクライマーは高難度課題を登るため、意気揚々と岩に出かけました。

持ち前のパワフルさと保持力で強傾斜を突破。

しかし強傾斜から抜け出せずに落ちてしまいます。

理由は言わずもがな、マントリングの技術不足。

これは極端な例ですが、このように一部分の苦手はクライマーの足を引っ張ります

上記のクライマーの場合は分かりやすいですが、ほとんどの人の場合はたくさんの苦手が隠れていますし、わかりにくいものです。

しかも、苦手は常に変化し、それらを放置することは、大概スランプの原因となります。

一部分の得意を伸ばすよりも、数ある苦手を少しずつ克服していったほうがクライミング全体のパフォーマンスは向上します。

まずは自分の苦手を見つけましょう。

得意なことには、今は伸びしろがほとんどないと言っていいでしょう。

「面倒くさいと思っていること」「やったことがないこと」「苦手なこと」にこそ、伸びしろがあります。

僕はスローパーが苦手です。(笑)

bishop ascid wash right V7 マントルで落ちるなんて勿体ない!

クライミングはなんて難しいんだ!

クライミングはランニングなどとは違い、必要とされる運動能力が幅広く、それだけ難しいスポーツです。

ホールドの向き、形状、距離、壁の角度によって無限に変わる体の動きに対応していくには、膨大なクライミングの経験が必要となります。

その中で、初心者~中級者の方たちが自分で自分の苦手を知る、ということは非常に難しく大変なことです。

基本的には苦手を自分で探し、それを克服していかなければいけません。

もし、あなたにそれを教えてくれる人がいるとしたら、それはラッキーなのです。

初心者~中級者の方ができない課題に直面した時、「筋力不足」「柔軟性不足」「保持力不足」「リーチ不足」これらを理由にすることがほとんど。

それらも一因としてあるかもしれませんが、「ムーブの精度不足」を理由に挙げる人はほとんどいません。

ムーブの精度不足とは簡単にいうと、無駄な力を使わずに登るための、正しい姿勢や連動ができていない状態のことです。

あなたがもし、登れない原因として「筋力不足」「保持力不足」だけを挙げているとしたら、その知識不足が伸びしろです。

連動、脱力、足置き、体の位置、持ち方、タイミング、ムーブ、メンタル、呼吸、普段の食事、姿勢…これらをもう少し意識してみてはいかがでしょうか。

得意だけど効率の悪いムーブの罠

御岳 オプティミスト 初段

クライマーにはあるジレンマがあります。

得意なムーブは効率の悪い動きでも楽に感じ、苦手なムーブは効率の良い動きでも難しく感じる。

というものです。

これは、”極端に足置きが下手なパワークライマー”に例えると分かりやすいかもしれません。

足置きが苦手なクライマーが、キャンパシングでムーブをこなしたとします。

本人はこれが一番楽だと思い込んでいます。

長いルートで足を使わずにキャンパシングを続けるということは、無駄にエネルギーを使ってしまい、効率が悪いですよね。

反対に、足置きが上手なクライマーはうまく足に体重を乗っけること、力をいなすことができます。

しかし、足置きが苦手なクライマーが足をしっかり乗せようと注意を払うと、それに意識を持っていかれ動きがぎこちなくなり、結果パンプしてしまいます。

足置きが苦手なクライマーは言います。

「やっぱりキャンパじゃないか!」

違います。

足置きが苦手なクライマーは、効率の良い足置きに慣れていないだけなのです。

これは、車の運転と同じです。

教習所で運転を習っている時は、いろいろなことに注意を払ったり、緊張したりと初めはぎこちなく運転をします。

この時の運転は難しく感じています。

しかし、何か月も車に乗り、操作に慣れ、向けるべき場所に注意を向け、リラックスできるようになります。

余裕をもてるようになるのです。

これと同じで、クライミングの動きにも慣れがあります。

前項で「クライミングは必要とされる運動能力の幅が広い」と言いました。

車の単純な操作に慣れることよりも、クライミングの多種多様な動きに慣れることのほうが確実に難しく、膨大な練習時間がかかります。

この難しさ故、”効率の良い苦手”を練習しなくなるのです。

苦手の練習は恥ずかしさを伴うことも要因としてあるのではないでしょうか。

なぜなら、苦手なムーブはいつも登れているグレードよりも低いグレードの課題で練習しなければいけないからです。

以上の原因から苦手を放置し、得意な動きばかりしていると実力が上がらず、スランプやプラトーに陥ります。

得意だけれど効率の悪いムーブの罠”が分かっていただけたでしょうか。

慣れと連動

クライミングの”ムーブ”や”ムーブのつながり”は、普段の生活にはない特殊な動作です。

この特殊な動きを無意識に連動させることは、考えるだけでできるものではありません。

ムーブをひたすら繰り返し、神経を刺激し、記憶と体に定着させる。

要は「体で覚える」ことが必要になってきます。

例えば、ランジ(ジャンプムーブ)は一瞬の中で、いくつもの筋肉を正しく連動させ続けなくてはいけません。

上半身の力を入れるのが早いと距離は出ませんし、下半身の力を入れるのが早いと壁から離れてしまいます。

力を入れる向きも狂うと、狙った場所に体が到達しません。

さらに、力を入れる強さだったり、飛びついた先のホールドを持つタイミングだったりと、考えなければいけないことは本当に多いですよね。

これは、トライ→考える→トライ→考えるを繰り返して「体に覚えさせる」ことでムーブの精度が上がっていきます。

時にはアドバイスをもらったり、自分の動画を撮って研究することや、違うタイプのランジを行ってみることが必要です。

肝心なことは、”楽に正確に”ムーブをこなせるようになることです。

とれなかったホールドが取れて終わり!ではだめなのです。

ムーブの精度を上げるということは、無駄な力を使わずに、正しい姿勢でうまく連動できるようにすることですから。

新しい動きや苦手な動きを練習する時は、安全で恐怖を感じることがない環境で登り、決して無理をしてはいけませんよ。

ストイックな人

瑞牆 十六夜 初段

自分の限界グレードばかりをトライしている、ストイックな方が注意しなければいけないことがあります。

限界グレードや難しい課題、さらに、疲れや恐怖を感じるルート、自信の持てないルートはムーブと連動をぎこちないものにしてしまいます。

オブザべーションの時点で自分で考えていたムーブと違ったり、苦手な動きが出てきた場合もそうです。

これらは登っている最中、意識してコントロールしなければいけない領域が増えるため、余裕がなくなります。

つまり、余裕がないとムーブの精度が上がりにくくなります。

よって、初心者~中級者の方が「無意識でムーブをつなげること」や、「体を連動させること」ができるようになるためには、多少の余裕と莫大な練習が必要です。

ムーブを体にに刻み込むには、練習の時点で余裕のあるより精度の高い一手を出し続けることが必要になってくるのです。

莫大な練習の末、無意識にできる領域が多くなると、細部のコントロールに割く余裕が生まれます。

このようにムーブの精度が上がり、無意識でできる領域が多くなるにつれて、オンサイト能力も上がるはずです。

オンサイトグレードは、自分がどれだけのことを無意識でできるか、一種の指標ですね。

強くなるために大切なこと

「登れない課題があった時」や「自分が上達していないと感じた時」、なぜ登れないのか考えていますか?

それは、冒頭でも述べたように「筋力不足」「柔軟性不足」だけだと思っていませんか?

頑張っているのにスランプを抱えているクライマーは、知識が不足している可能性があります。

自分よりもはるかに難しい課題を登っている人の練習を、そのまま自分の練習に取り入れる方が多いです。

強くなりたいから強い人の真似をする…

それは何も考えていないのと同じです。

強い人がやっているトレーニングと同じものが有効な場合もあります。

しかし、ほとんどの場合、今のあなたに適したトレーニングは違います。

考えなければいけないことも違います。

クライマーによって苦手が異なるからです。

まずは、自分の苦手や、まだ知らないクライミングを知ることが大切です。

見極め、弱点を強化できるトレーニングができれば、登れる課題が増えていきます。

登れる課題が増えると「今以上にクライミングが楽しくなる」はずですよ。

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