今回はイボルブのゼニストプロについてレビューします。
※2024年春発売予定。
ダウントゥしているとトゥフックがいまいち…
ボテは踏めるんだけどヒールがかからない・・・
本気シューズはサイズを攻めているから快適に履けない…
こんな不満があったあなた…
安心してください、ゼニストプロが解決してくれます。
このシューズの性能をまとめると「高い汎用性に富んだ革新的シューズ」です。
メーカーからはジム向きプロ仕様モデルと謳われています。
しかし、僕が履いて登った感じではオールラウンドシューズで、ジムでも岩でも高いパフォーマンスを発揮してくれそうです。
一足あると安心する、「あってよかった…」と頼れるパートナーになってくれるシューズ。
そう、それが「ゼニストプロ」です。
この記事を書いた人
ぶちょー(クライミング飛鳥店長)
15歳からクライミングをはじめ、現在29歳。
趣味は読書やカメラ。
【登ってきた主な課題】
最高RP 四段 5.13d フルチャージ(四段) Midnight Lightning(V8)などなど
イボルブ【ゼニストプロ】の仕様
2021年に発売された「ゼニスト」を進化させ、ジム向けプロ仕様モデルとして完成した高性能シューズがゼニストプロです。
まずは従来のゼニストを説明します。
イボルブのゼニストってどんなシューズ?
日本では2021年に発売されたゼニストですが、特徴的なのはシューズの柔らかさと軽さです。
最初から柔らかいですが履きこめばさらに柔らかくなるため、5.10のVXIに代わるシューズとして購入した方は少なくないはず。
柔らかさゆえにボテの処理、トゥフックの性能はピカイチでした。
ただ、ヒールに剛性が足りないのと浅いヒールカップから、「脱げてしまう」「エッジにヒールは難しい」などの声が上がりました。
ゼニストのヒールフックにはある程度の技術が必要でした。
ゼニストプロ
今回発売されるゼニストプロはゼニストをさらに進化させ、イボルブの最新機能をすべて取り入れた「ジム向けプロ仕様モデル」となります。
ゼニストと変わった点として「ラブバンプ」、「エボラップ」、「赤いミッドソール」、「剛性のあるヒールカップ」「巻き込んでいるソール」があります。
ソールはなじみのある「TRAX SAS 4.2mm 」となっています。
ラブバンプ
まずは引き継がれてきたシャーマンの画期的なシステム”ラブバンプ”です。
これはシューズの中に手を入れると分かるのですが、指の付け根にあたる所がボコッともり上がっています。
この機構を取り入れることでダウントゥしているのにトゥフックがかかりやすくなっています。
従来のシューズはダウントゥしているとトゥフックがいまいち効きにくいという特徴がありましたが、この「ラブバンプ」はその問題を解決します。
要するに「ダウントゥによる掻きこみとトゥフックの性能を両立させている機構」と言えるでしょう。
イボラップ
ゼニストプロはシャーマンプロやファントムなどで見られる、外側から内側に閉じるベルクロを使ったクロージャ―システムを採用されています。
さらにミッドソール【赤】が土踏まずを覆っているため、ベルクロを引っ張ると土踏まずが固定され、つま先とヒールにより力が伝わるようになります。
このクロージャ―システムを”イボラップ”と言います。
従来のシューズだとサイズを攻めてつま先とヒールのテンションを高めていた方が多いですが、このイボラップがあることにより痛い思いをせずに快適に履けるようになりました。
「きつくないのに高い次元で性能を発揮できる革命的な機構」となります。
巻きあがったソール
ソールのサイドが上に巻き込んである(ノーエッジ化している)ため、現代のクライミングのためのソール形状になっています。
巻き込むことで、ハリボテや大きなホールドとの接地面が増え、フリクションが向上します。
剛性のあるヒールカップ
従来のゼニストに比べ、ヒールに剛性があります。
次に、イボルブのシューズを愛用しているトップクライマー達を紹介します。
世界で活躍するEVOLVクライマー達
岩場に行くクライマーならこの方の名前は聞いたことがありますよね。
日本の高難度課題の90%?は小山田大さん初登です。
愛用シューズは初代シャーマンを改造して使っている模様。
聞いたことありますか?
ダニエルウッズ。
「Return of the Sleepwalker」V17 初登。
世界で最も難しいボルダー課題を登った1人です。
愛用シューズはファントムですね。
コリン・ダフィーもイボルブクライマーの一人です。
2017、18年の世界ユース選手権で他を圧倒してリードを2連覇しています。
ゼニストプロLV、しっかり履いてますね。
ポール・ロビンソンもイボルブクライマ―。
岩場で数々の高難度課題を登っています。
白石阿島もイボルブシューズ履いています。
日本では渡辺風馬さんがサポートクライマーとして活躍しています。
コンペも岩場も多くの記録を出していますね。
セッターとして活躍する沼尻さんもイボルブのシューズ履いています。
アグロめちゃめちゃ使っているイメージ。
イボルブ「ゼニスト プロ」レビュー
ここからは僕がゼニストプロを履いた感覚を伝えていきます。
まずは僕の足のサイズ感と使用してきたシューズです。
購入時の参考になれば幸いです。
- ミウラー EUR38 ジャスト 裸足
- コブラ
- パイソン
- フューチュラ
- ソリューション EUR39
- インスティンクトVS EUR40 ジャスト
- フューリアS EU40 ジャスト
- アグロ US8 ジャスト
- フリーレンジプロ US8.5 ゆとりあり
- VXI US9 ゆとり大
- JET7
- フラッグシップLV US8 きつめ
- VIM US8.5
- レグルスLV US8.5 ジャスト
- スープアップ US8.5 ゆとりあり
- シャーマンプロ US8.5
- ゼニストプロ US9 靴下 8.5だとビニールで攻めを感じました。
僕は、わりと細身で甲が低い足形をしています。体重は58㎏です。
僕は傾斜壁でのトゥやヒールが気に入って、ここ数年ほど岩場でアグロを使用しています。
三段以上の課題は半分はアグロで登っているはず・・・
そのおかげかイボルブのシューズには絶大な信頼があります。
今回、発売前ですがイボルブ様から試し履き用シューズとして借りることができました。
(イボルブジャパン様 いつもありがとうございます)
さっそく次の項目をレビューしていこうと思います。
- 手に取った感覚
- 足入れ感
- ヒールフック性能
- トゥフック性能
- エッジングやスメアリングの性能
- 残念なところ
手に取った感覚
まず手に持って分かることは作りの良さです。
丁寧に作られていて、品質が高い。
さすがイボルブって感じです。
シャーマンプロやアグロよりは軽いですが、やはり多少の重さは感じます。
ゼニストを進化させているシューズと言われているため、かなり柔らかめを想像していましたが、実際に持ってみるとがっしりしています。
土踏まずの部分はしっかり柔らかいですが、ヒール部分とソールは硬く感じます。
かといってインスティンクトVSやミウラーほどの硬さではありません。
インスティンクトVSRやソリューションに近いと思います。
まあこの辺は使い込むとまた変わってきそうです…
シューズの幅は広めに作られているように感じます。
ベルクロのひもは細いので、強くひっぱるのを続けていると切れてしまいそうです。
履いてみて
※ほぼ新品の使用感です。
先に結論を言うと「硬いけど柔らかく、汎用性が高い、いいところ取りができているシューズ」だと感じました。
ヒールとつま先(ラブバンプ部)に剛性があるため硬いシューズに分類しがちですが、土踏まず部分とトゥラバーは柔らかく、自由度が高いシューズと言えます。
僕は最近はかなり柔らかいシューズを多用しているためか、思ったよりも硬いと感じました。
旧ゼニストの柔らかさを想像していたのもありますね。
最近使用しているシューズはアンパラレルのスープアップ(ハーフサイズ上げ)のため、ゼニストプロの拘束感に圧倒されてしまいました。
これだけ足にフィットすれば、自分の足をコントロールしやすそうです。
足入れ感
僕はペルアドラの靴下を履いて、US9でぴったりでした。
入口がセパレートタイプになっているため、ストレスなく足が入ります。
かなりフィットしているのに加え、足を入れた瞬間からつま先がもう地面を掴んでいます。
「これがラブバンプ…」
凄い機構です。
ベルクロを締めると足全体が拘束され、身が引き締まる感じがします。
道着の帯を締める感覚?
余っている部分がなく、履き心地がとっても良いです。
くるぶし以外は…(後に説明します)
ヒールフック性能
ヒールに剛性があり、何も考えなくてもしっかりかかります。
いわゆる「つぶす系」のヒールではありません。
剛性的にはミウラーに近いです。
これは旧ゼニストの脱げそうになるヒールカップと完全に違います。
脱げる気は全くしませんでした。
ヒール外側はエッジが立っており、細かいホールドに引っ掛かります。
トゥフックの性能
ラブバンプが機能しているのか、土踏まずの部分の自由度が高いからなのか、基本的になんでもかかります。
性能よし。
アッパーのソールは薄めです。
かかるけどちょっぴり痛め。
掻きこみ
従来、トゥフックの性能がいいシューズは、自分の足の力を使って掻きこまないといけないシューズがほとんどでした。
ゼニストプロはトゥフックが効くのに掻きこむ力もサポートしてくれています。
衝撃でした。
ラブバンプ恐るべし。
エッジングとスメアリング
ゼニストプロはつま先の先端とヒールが分かれているセパレートタイプの作りになっています。
土踏まず部分はシャーマンプロに比べて柔らかく、自由度が高いと感じました。
土踏まず部分の自由度が高いと、ホールドをペターっと踏むのが楽になります。
さらに、ラブバンプが入っているからなのか、親指側に剛性を感じました。
これのおかげか、小さいホールドもエッジングでしっかり踏むことができます。
残念なところ
シャーマンプロよりは軽いですが、やはり重く感じます。
体重の軽いクライマーが振られるムーブをすると重さを感じるはず。
そして一番の難点はかかとのスリングショット部分が若干高く、くるぶしにあたって痛いことが挙げられます。
※僕が履いた感想です。これは本当に足形によると思います。
僕はペルアドラの靴下を履いているので若干の痛みでしたが、ビニールの上から履いたところ、「痛いな」と感じました。
登っている時はたいして気になりませんが、通常時は少し気になります。
ヒール部分が高くなっているおかげでヒールは脱げる気がしませんが…
ちなみにジムで試し履きしていただいた時、あたる人とあたらない人は五分五分くらいでした。
このデメリットを解決してくれるのがゼニストプロLVなはずです。
LVは試せていないですが、メーカー曰く、細め薄めでヒールカップが小さいようです。
くるぶしがあたる方や甲が余る方はぜひゼニストプロLVも試してみて下さい。
まとめ
「エッジングできる」「ボテを踏める」「トゥーフックが効く」「ヒールが効く」「掻きこめる」「快適に履ける」「長持ちする」
以上の項目を満たすシューズが、やはりクライマーが求める最高のシューズだと思います。
他メーカーを含めたいろいろなシューズを履いてきましたが、「ダウントゥしているとトゥーフックが効きにくい」「快適に履けるけどエッジングが微妙…」「ヒールがかかるけど攻めすぎて痛い」など、なかなかいいところ取りができるシューズはありませんでした。
ゼニストプロは「ラブバンプ」や「イボラップ」のおかげで、相反する性能を高い次元で両立し、どんなクライミングにも対応してくれるはず。
一足あればどんなシチュエーションでも安心できる高性能シューズです。
ぜひ履いてみて下さいね。
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