クライマーのトレーニング計画[ピリオダイゼ−ション]

皆様は大会に向けたトレーニング、更に岩場のシーズンに向けたトレーニング、していますか?

クライミングに限らず、スポーツの世界では本番までにトレーニングの期間分けをし、内容を変えることにより本番により良いパフォーマンスが出るように調整します。

今回は、1年や半年間という長い期間のトレーニングの期分けと、シーズンに向けたトレーニング計画のススメを紹介しようと思います。

目次

ピリオダイゼーション

「ピリオダイゼーション」

この言葉を聞いたことはありますか?

ピリオダイゼーションとは、1年、半年という長期的なトレーニング期間全体に同じトレーニングを繰り返すのではなく、トレーニング期間全体をいくつかの時期に分けます。

その長期的な期間の中でトレーニングを変化させ、それらを全体として作用させることによって、オーバートレーニングや飽きを防止し、目標をより効率的で確実に達成するための方法です。

ピリオダイゼーションは大会本番や岩場のシーズンから逆算し、その時期にパフォーマンスが最も良くなるようにトレーニング内容を考えていきます。

目標を決める

先んじてやらなければならないことは、「目標を決める」こと。

なぜなら、目標を決めることでモチベーションの持続効果、及びトレーニングメニューを定めることができるからです。

「ピリオダイゼーション」を実施するにあたって、まずやらなければいけないことは具体的に目標を決め、イメージしましょう。

「8フレームアウトカム」おすすめです。

目標の決め方と「8フレームアウトカム」の詳細は以下の記事を読んでみてください。

「ぶちょログ」
強くなりたいなら目標を決める。[クライマーとしての第一歩] | 「ぶちょログ」 僕には目標があります。 「五段が登りたい」 まだまだ遠い夢です。 更に、 この投稿をInstagramで見る Daniel Woods(@dawoods89)がシェアした投稿 - 2019年 8月月21日午前8...

ピリオダイゼーションの内訳

半年、または1年という期間という中でどのようなトレーニングをしていくのか。

説明します。

ピリオダイゼーションの主な期分け内容は「基礎トレーニング期」→「ビルドアップ期」→「マックスパワー期」→「エンデュランス期」→「調整期」→「本番」→「休養期」となります。

簡単に言うと、最初は軽く、基礎体力や基礎スキルを鍛えます。

次の期間でパワーを上げるために筋肉を増やし、パワーを蓄えたら本番を想定した課題を登ります。

本番が近づいてきたら課題の強度を少し落とし、クライミングスキルを洗練。だんだんと体のコンディションを整え本番に備えます。

本番が終わったら休養。

これが大まかなピリオダイゼーションになります。

トレーニングの内容や、サイクルの期間は目標や個人のレベルによって変わります。

初心者や怪我の復帰直後の方は「基礎トレーニング」の期間を多く設けます。

岩場での成果を重要視している方などは半年のサイクル。

大きな大会などを目標にする方は、1年間の計画を立てたほうが良いでしょう。

自分にあったサイクルと内容を考えましょう。

ちなみにこの記事で説明する期間分けは、クライミング歴2年以上の方向け。

1年未満の方は他のプランニングを別記事にします。

①はじめは軽く

はじめはサーキットトレーニング、持久力トレーニングなどの最高出力の30%前後のトレーニングから始めます。

この時期は基礎トレーニングから始め、徐々に持久力トレーニングに移行していきます。

この、”基礎トレーニング期”では簡単な課題を登り込みます。

無意識で動ける動作を増やしていくことを目的に、自分のフォームや動作を見つめ直す期間です。

次の持久力トレーニングの期間は、基礎トレーニングの期間よりも出力を70%前後にあげていきましょう。

このトレーニングの目的は、持久力を上げていくことも目的のひとつですが、毛細血管を発達させ回復しやすい体作りをするためでもあります。

この時期は自分の実力が出せずにモヤモヤがたまりやすいので、クライミングをしない日はアクティブレストなどで気を紛らわします。

登る頻度は、トレーニング強度が低いため週4〜7日で構いません。

1年計画ならば1〜2ヶ月間の期間を割り振ります。

半年計画ならば半月〜1ヶ月の期間を割り振るようにしましょう。

怪我から復帰して直後の方や、初心者の方はこの期間を長くします。

②力をつける

筋肉

②の期間は力をつけるトレーニングを行います。

この期間は”ビルドアップ期”と言われ、筋肉を肥大化させていきます。

持久力的な追い込み、限界出力のボルダー、懸垂やキャンパシング、体幹トレーニングなど、徹底的に追い込んでいきます。

この時期は、①の時期と逆に追い込むため、疲労がたまりやすく、辛いです。

トレーニングの強度が高いため、登る頻度は週1〜3日間とし、トレーニングをした次の日は必ずレストをしましょう。

後に説明しますがこの期間は「食事」と「レスト」が重要となります。

1年計画ならば3ヶ月ほど、この期間に割り振ります。

半年計画ならば1ヶ月〜2ヶ月ほどの期間を割り振りましょう。

③本番に向けたトレーニング

この期間は本番を想定したトレーニングを行っていきます。

”マックスパワートレーニング”ともいい、筋力の出力を100%に近づけます。

本番をイメージし、何回も繰り返し最大負荷をかけることで、筋動員率を100%に近づけることができます。

この時期は怪我をしやすく、登った後はしっかりレストをはさみましょう。

きちんと栄養も摂取してくださいね。

登る頻度は週3日まで。

1年計画ならば、1〜2ヶ月ほどこの期間に割り振ります。

半年計画ならば、半月〜1ヶ月ほどの期間を割振るようにしましょう。

④質を上げていく

この時期は負荷を減らし、クライミングの質を上げてスキルを洗練させていく時期となります。

”エンデュランス期”とも言います。

主に持久力トレーニングとし、サーキットトレーニングやオンサイトトレーニングを行います。

限界グレードよりも下の課題をひたすら登り続けます。

登る頻度はこの期間も週3日までにしましょう。

1年計画ならば1〜2ヶ月ほどこの期間に割り振ります。

半年計画ならば半月〜1ヶ月ほどの期間を割り振るようにしましょう。

⑤調整・本番

”調整期”にしなければならないことは、本番に向けてコンディションを整えること。

体のコンディションだけでなく心のコンディションも整えていきます。

ジムでは本番を想定した課題を登ります。

本番をシミュレーションするために、小さな大会やいろいろな岩場に出掛けてみて自信をつけていくのもありです。

この期間は1年計画の場合、2週間から1ヶ月ほど使います。

半年計画の場合は2週間ほどの期間を割り振るようにしましょう。

この時は、週2〜3回の頻度で登りましょう。

大会などが近づいてきたら、疲労を残さない程度の軽いクライミングをして、フィジカルとテクニックの低下を防ぎます。

大会の3日前までしっかり追い込む選手もいるそうです。

本番直前に強度の高いトレーニングをしてしまうと、疲労により、良いパフォーマンスが出せなくなります。

大会前に不安を感じても、追い込まないようにしてください。

⑥休養

寝てる女性

大会などが終わったら”休養期”に入ります。

この期間はシーズン中に蓄積した疲労と、怪我を回復させるためのものです。

1週間から1ヶ月程度の完全休養をします。

と、ここまでがピリオダイゼーションになります。

目標を決め、計画を立て、本番に向けて少しずつ調子を上げていくことで、大会本番や岩場で最高のパフォーマンスを出せるようにします。

トレーニングと一緒にやるべきこと

本番で成果を出すには目標を決め、計画を立て、死ぬほどトレーニングしているだけでは、パフォーマンスは上がりません。

目標、計画、実行の他に「食事」「レスト」「メンタル」「ストレッチ」など、それ以外にもトレーニング期間中に考えなければならないことはたくさんあります。

例えば”食事”について。

皆さんは食事の重要性、分かっていますか?

僕たちは食べたもので体を作り変えていきます。

動くためのエネルギー。

筋肉を大きくする(パワーを上げる)ための栄養。

指皮や傷の修復。

いくら強度の高いトレーニングをしても、食事をおろそかに考えている人は強くならないのです。

さて、食事の重要性は下の記事にて説明しておりますのでぜひ。

「ぶちょログ」

食事を考えたら次はレストです。

毎日のように強度の高いトレーニングをすると、強くなるどころか筋肉や免疫力は減り、怪我をしやすくなります。

やりすぎるとオーバートレーニング症候群になる可能性もあります。

「ぶちょログ」
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「ぶちょログ」
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食事や睡眠を考えて実行するのと同時に、ストレッチやメンタルトレーニングなどの体と心のケアも欠かせません。

どれかをおろそかにすると、最高のパフォーマンスは出せません。


参考文献

クライマーズ・バイブル(下)トレーニング編 内藤 直也 , 木村 伸介 , 中田 唯 (著)

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