※この記事を読んで、動悸が激しく辛い、呼吸がしにくく苦しい、と感じたらすぐに読むのを辞めてください。
※過度な動悸、過呼吸になった場合は深呼吸をしてください。
※この記事で紹介するものは100%確実にトラウマを緩和できるテクニックはないものだと考えてください。それが自分に合わなければ即座にやめ、他の方法を試してみてください。
エクストリームスポーツとも呼ばれているクライミング。
ぱっと聞くと、なんだか凄いことをやっているような気持ちになりますが、これは”危険で過激なスポーツ”という意味です。
ラグビーやバスケットボールなどの競技人口の多いスポーツに比べて、まだまだクライミング人口が少ないため怪我や死亡事故が目立っていません。
しかし、クライミングはいつでも大けがや死亡のリスクがつきまとい、危険は隣り合わせなのです。
自分の実力とリスクの折り合いがつけられなかったり、気のゆるみだったり、知識不足や器具の不備による怪我は多く、数多くのクライマーが怪我をし、少なからず恐怖心を植え付けられています。
「恐怖心なんてなくなればいいのに…」
そう思っている方がおおいのではないのでしょうか?
ひとつ言っておきます。
恐怖心がないクライマーは怪我をする確率が跳ね上がります。
なぜなら恐怖心は、自分に迫る危険を察知してくれる大切なシグナルだからです。
恐怖心は悪いこと、邪魔なものではありません。
「以前よりも怖い…」そう感じたら、危険を察知する能力が上がったと考えるべきです。
でも、過度な恐怖心や大きなトラウマは、大好きなクライミングをつまらないものに変えてしまうかもしれません。
恐怖心に囚われて、さらに危険な状況に陥ってしまうかもしれません。
自分の体が大事な場面で凍り付いてしまう、大量の汗が湧き出てくる…
そのような状況に陥らないようにしたいですよね。
この記事は
「クライミングを続けたい」
「でも恐怖やトラウマのせいで動けなくなってしまう」
「足が震えて動けなくなってしまう」
「怖くて逃げたくなってしまう」
「恐怖心に負けないメンタルが欲しい」
そんな方がトラウマとは何かを知り、過度な恐怖心やトラウマを克服し、折り合いをつける方法を紹介します。
もう一度言います。
決して恐怖心をなくそうなんて考えてはいけません。
恐怖心をなくし、経験に裏付けされた自信のあるクライミングができなくなればそれは「無謀」です。
無謀になることは絶対にやめましょう。
~参考文献~
心とからだと魂の癒し トラウマから恢復するためのPTSDワークブック
正しく知る心的外傷・PTSD:正しい理解でつながりを取り戻す
トラウマのことがわかる本 生きづらさを軽くするためにできること
超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド
幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門
ぼくのブログは本から得た知識をまとめて、クライマーでも使えるものを選んで執筆しています。
トラウマについて
トラウマは治る
はじめに、トラウマを抱えていることで不自由を強いられている方、信じることができなくなった方、恐怖、痛み、苦痛、不眠、不安を抱えている方に伝えなければいけないことがあります。
”トラウマは必ず回復する”
ということです。
なぜなら、心にも体と同じように免疫システムがあるからです。
時間が経つにつれて心も回復していきますし、回復を早めることも可能です。
トラウマを抱えるとメンタルが不安定になり「ずっとこのままなのではないか…」という考えに陥りやすいですよね。
しかし、回復したい、克服したいと思ったとき、「ずっとこのままなのではないか…」と思って過ごすよりも「少しずつ克服している」「これからもっと楽になる」と考えて過ごしたほうが、ずっと治りは早いのです。
「自分の免疫システムを信じることで治りが早くなる」
ということも覚えておいてください。
他には、自分の心情を記録していくことも回復を早めるために有効です。(後に説明するエクスプレッシブ・ライティング)
記録する理由は、心の免疫システムの活用やこれからの記事で説明するテクニックを使いながら、自分の心境やトラウマについて1年ほど記録すると1年前の自分よりも回復していることが確認できます。
そうすると「これからも、もっと治っていく」という予測が立てられようになり、記録せずに1年過ごすよりもずっと心は楽になります。
トラウマを抱えている人が目指すべきところは「治すのは自分だと意識し、過去に支配されない今を取り戻すこと」です。
過去に支配されない今を取り戻すためにできること
①自分を苦しめている今の状況はトラウマの影響であることを知る
②過去と今を区別する
③安全を確保する
これらを達成するためには、脳と体の両方からアプローチすることができます。
例えば、後述する「脱フージョン」のテクニックは、自分の思考を変えていく脳へのアプローチになります。
「瞑想」「呼吸法」など、行動から変えていくものが体へのアプローチになります。
回復力の上げ方や、回復のためのアプローチについてもすこしずつ説明していこうと思います。
トラウマを治す準備
トラウマを抱えている人に言ってはいけないこと、トラウマを抱えている人が思ってはいけないことは
「ポジティブになろう、前向きになろう」
「もっとつらい思いをした人もいるから」
という言葉です。
周りの人が気をつけなければいけないことは、回復させることではなく、”回復の足を引っ張らないこと”です。
そして、かけるべき言葉は「回復を信じている、いまは辛いだろうから何でも言って」という言葉です。
そもそもトラウマを抱えている人は、トラウマのせいでポジティブになれず、悩んでいるのです。
悩んで解決するようなことならば、そもそも悩み続けることなく回復します。
悩み続けていると、おそらくどんどん思考の深みにはまっていってしまいます。
それではトラウマの回復には逆効果です。
回復にはいっそ、手を動かしてしまえばいいのです。
どういうことかというと、
「自分の人生をよりよくするために、自分ができることから行動していく」
ということです。
悩みが深みにはまっていくのを防ぐためには、より行動に意識をフォーカスし、手を動かし、今できることを試していくことが必要です。
トラウマを抱えている人やメンタルが弱っている人は「人生をよくしていくために、少しずつ実験していこう」という考えをもってみてください。
トラウマを治す準備として、「自分にとってより良い人生とは何か、目標を決め、書く」ことも有効となります。
これは後に詳しく説明しますが、「エクスプレッシブ・ライティング」という科学的に根拠のあるテクニックです。
次に、”焦り”は回復力を落とす、ということに注意しなければなりません。
焦りは心の余裕を奪ってしまうのです。
私たちは心に余裕を持つことで、過去のトラウマに引き込まれず、現在の自分をどうするかに焦点を当てることができるのです。
心の余裕を作るには「良い行いをする、他人に親切をする」「マインドフルネスを学ぶ」とよいでしょう。
これらについても、これから説明します。
衝撃的な場面に出くわすと起こること
トラウマの原因となるような、心身の安全が脅かされる事態に遭遇すると、ストレスホルモンが分泌され交感神経の働きが強まり、血圧、心拍数が増加し呼吸が浅くなります。
これが第一段階です。
その結果、第二段階の「闘争」「逃走」「凍り付く」などの反応が起こります。
・闘争
脅威を与えるものや状況や人を攻撃し打ち負かすことで現状を打破しようとします。
・逃走
危険な状況から逃げ出し命を守ろうとします。
・凍り付く
恐怖に立ちすくみ動けなくなります。特に子供たちが陥りやすい反応です。
ここまでがストレス反応となります。
状況が落ち着いたり危険が去ったとしても、何らかのトリガーによってストレス反応が起こる状態が”トラウマ”と呼ばれます。
PTSDとは
過度なトラウマの代表的な例、外傷後ストレス障害(PTSD)とは何かを説明していきます。
PTSDは大きなストレスを受けることで活力が失われ、危険な状況になっても適切な行動がとれない、身体や感情、思考、対人関係に大きな影響を与えてしまう状況を引き起こします。
PTSDの症状には以下のものがあります。
・トラウマとなった出来事に対する反応が一定以上続く
・少なくとも6ヶ月後に反応が起こる
・死を伴う、重症となる出来事に遭遇、目撃、体験をしている
・極度の不安、無力感、恐怖の反応が起きる
・苦痛がよみがえる
・苦痛を伴う夢を見る
・フラッシュバックなど、再び体験する感覚がある
・光景、におい、音などのトリガーで苦痛や反応が起こる
・トラウマと関連した思考、感情、会話を避けようとする
・トラウマの重要箇所を思い出せない
・感情が希薄になる
・未来を思い描くことが困難
・睡眠が困難になる
・集中が困難になる
・過度に警戒する
気をつけなければいけないこと
これからトラウマを治していこうとしている人が気をつけなければいけないことが3つあります。
①トラブルの原因がすべて自分のせいだと思ってしまう。
トラブルの原因はいろいろなことが重なって起こっているのです。
「すべて自分が悪い」という考えは間違いです。
②ほかの部分にも影響を与えてしまうと考えてしまう
「こんな失敗したから、もう何もできない」
「人生が台無しになってしまった」
と考えてしまう人がいます。
実際にはほとんど影響はありません。
③このトラウマはずっと続いてしまうと考えてしまう
冒頭で話した通り、トラウマは時間と共に回復します。
悩み続けるよりも治すための行動をしてみましょう。
トラウマを抱える人を支えるために
トラウマ治療は時間の経過の中で、常に変化しながら前進していきます。
というのは、希望を持っている時期や無力感に打ちひしがれる時期が代わる代わるあり、「昨日は前向きだったのに、今日は、、、」となることもあります。
これは何もおかしくないことです。
周りの人も本人も回復を信じましょう。
トラウマを抱えている人は相手を選び、自分の気持ちを話すことも大切です。
「自分の気持ちを言葉にしにくい」、「話すのが恥ずかしい」、「愚痴を言っているようで嫌だ」、「弱さをさらけ出したくない」これらのような考えを持っている方もいらっしゃるかもしれません。
これは愚痴や弱みではなく、積極的な回復法です。
親しい人に話すのが辛いなら、赤の他人でも、セラピストにでも構いません。
気をつけなければならないことは、話す相手を選ぶとき、「あなたが悪い」「心が弱い」「あなたよりひどい目にあった人はいる」と言ってくる人には注意しなければいけません。
話す相手はしっかり選んでくださいね。
話を聞いてもらうことができない人は、誰かと一緒に行動するだけでも構いません。
その中で話してもいいかな、気持ちを表現してみようかなという気持ちになるかもしれません。
ポイントは「一人で悩み続けてはいけない」ということです。
・・・
トラウマを抱える人を支える人に読んでもらいたいと思います。
トラウマを抱える人の中には、助けを求めるのが苦手な人もいます。
「相手に嫌な思いをさせたくない」
「重荷になりたくない」
「自分が何を求めているのか分からない」
「助けを求めることが弱いことだと思っている」
「どうせ理解してもらえない、助けてもらえないと思っている」
このように、それぞれの人がそれぞれの事情や思いを抱えています。
「助けて」が言えなかったり、「泣いてもいいよ」で救われる人もいれば、泣けない自分を責める人もいます。
話して楽になる人もいれば、見守ってもらうことで楽になる人もいます。
人の役に立てることで楽になる人もいるのです。
トラウマを抱える人を支える人は、このような多様性を頭に入れ、その人に合った形でその人が「支えられている」という感覚が持てるようにしてください。
話を聞くだけではなく、しっかりと栄養のある食事、休養、睡眠をとれるようにサポートしていくことも大切です。
トラウマを抱える人の罪悪感と恥と悲しみについて
トラウマに対する反応として「罪悪感」と「恥」と「悲しみ」があります。
『罪悪感』
自分のトラウマに責任を感じているとしたら、罪の意識を抱えている可能性は高くなります。
◇罪の意識を軽減する4つのステップ◇
①まずは罪悪感を感じる理由を明確にしましょう。
②それは本当に自分だけの責任なのか、周りにいた人にはどのくらいの責任があったのかをはっきりとさせます。
③そして、自分が責任を感じているとしたら、これまでにもう苦しみ、自分を十分に罰してきたはずです。
その苦しみはその責任に見合っているか考えてみてください。
④最後に償う方法は何か考え、前に進むにはどうすればよいかを考えます。
この罪悪感を見つめなおし自分の原動力にするエクササイズには実際にはさらに多くの質問、ステップがあります。
重要な質問だけを抜粋してあります。
『恥』
恥は罪悪感より乗り越えるのが難しいといわれています。
罪悪感は自分のトラウマ場面でした(しなかった)ことを申し訳なく思う気持ちですが、「恥」は自分の存在を申し訳ない、人間として欠けていると思ってしまう反応です。
恥の根源となるものは、虐待や侵害、暴力、裏切り、いじめなどによりボロボロにされた経験による自己否定です。
「恥」を軽減するためには、自分が思う「恥の意識」と向き合うことが必要となります。
その根拠となる状況、なぜ恥になったのか、それを言ったのは誰か挙げていきましょう。
恥を乗り越える第一歩は認め、理解し、名前を付け、新しくリフレーミングしていくことです。
『悲しみ』
トラウマには高い確率で喪失(何かを失うこと)が伴います。
例えば、安全な感覚、安心な感覚、生きる意味、生きる目的、体の健康、人間関係、自分が何者かといいう感覚、自尊心、愛する人を失った場合に「悲しみ」が生み出されます。
「悲しみ」には、不信、ショック、怒り、不安、落ち込み、集中困難、不眠という反応があります。
起こったことを認めない、認めたくないのは当然の反応で、それは苦悩、苦痛から心を守る役割を担っています。
「悲しみ」を抱える人がまず目指すべきところは現実を受け入れることです。
コミュニケーションの方法
トラウマを回復させるための効果的なコミュニケーションを行うには、相手と直接話すことが大切です。
その中で自分の要望や感情を明確に伝え、相手を傷つけようという意図は持たず、話すだけでなく、積極的に耳を傾けましょう。
会話を進めていく場合に使えるテクニック、スキルを紹介していきます。
◇共感力
会話の中で自分の言いたいことを伝えようとすると、相手の気持ちを無視し、ストレートに言ってしまうことで喧嘩やすれ違いを起こすことがあります。
それを回避するためには、自分が言ったことが相手に受け入れやすいかを考えなくてはいけません。
つまり、相手の立場に立って相手の感情を想像しながら会話してください。
自分の言いたいことを伝えるのは大事ですが、相手が受け入れやすいように言うことがコミュニケーションを潤滑にします。
◇信頼関係
コミュニケーションにはお互いの意見を受け入れる信頼関係も大切です。
「私は言いたいことを言います。なので、あなたも言いたいことを言って下さい。」
というスタンスを双方が持ち、
「私が言っていることを考えてみてください。なので、あなたが言っていることも受け入れます。」
という認識に双方がなることで、深い会話が可能となります。
自分が言いたいことを言えるのは、相手がちゃんと聞いてくれるという信頼があってこそなのです。
◇前向きに考える
ネガティブになったとしてもポジティブな部分にフォーカスし会話を進めましょう。
ネガティブなものはリフレーミングしてください。
その考えは他にどのような意味があるか、どんな場合に使えるか、ポジティブな意味にできないかを考えましょう。
◇内容の明確化
内容の明確化の具体的な方法は、相手が話したことを言い換え、相手にフィードバックすることです。
「あなたが言っているのはこういうことですよね」
「あなたはこう思っているんですね」
というフィードバックを会話の中で行いましょう。
そして、「どうしてそう思っているのですか?」「なんでその行動をしたのか?」につなげてください。
内容の明確化のテクニックを使うことで、自分は相手の言っていることをどれだけ理解できているのかを把握でき、修正がしやすくなります。
話の内容を、より明確にすることができる効果もあります。
否定せずに理由を聞いて共感し、相手が求めているものを考え、話していくことが大切です。
◇感情を言い表す
「私はいま幸せです」
「私はいまこう感じています」
など、あなたがどのように感じているか、内面を伝えることでコミュニケーションに助けとなります。
◇伝え方
これまでのテクニックを紹介してきた中で、話の内容を明確に…だったり、感情を伝えて…などがありました。
ここでは具体的な”伝え方”を話していきます。
まず、言わなくても伝わると思ってはいけません。
自分が相手の要求や伝えたいものを感じることが難しいように、相手も自分をわかってくれていないことが大半なのです。
事実を伝えるのは楽ですが、自分の感情を正確に伝えるはとても難しく、自分の中で整理しないと伝わりません。
例えば、あなたが「怒っている」ことを伝えたとします。
「自分は怒っている」ということだけでは「なにに怒っているのか」「なぜ怒っているのか」「それは寂しいからなのか」「悲しいからなのか」「悔しいと感じているのか」が分かりません。
このように、相手には本当の意味では伝わっていないのです。
特に怒りの感情をそのまま相手にぶつけると、相手には攻撃されたと感じるため、そこでコミュニケーションが終わります。
伝える側は会話を始める前に自分の要求や伝えたいことを把握しておき、曖昧な表現を使わず、はっきり伝えましょう。
そして、文の最後は言い切り、濁さないでください、疑問形もいけません。
分かりやすく伝える方法として、
①何をわかってほしいのか、何が問題なのか
②それをどのようにしたいのか
③なぜそうなのか
これらを明確にすることで相手にわかりやすく伝えることができます。
言いたいことが伝えられないと、怒りなどの感情をぶつけてしまいますのでご注意ください。
トラウマや恐怖心の克服、緩和、折り合いのつけ方
この章では、トラウマを治す基本的なこと、反対にトラウマを治すために効果的ではないこと、フラッシュバックの対処、トラウマを緩和したり治すための具体的なテクニックをお伝えします。
トラウマを治す力を強める基本
まずはトラウマを緩和させるテクニックを学ぶ前に、普段の生活で気をつけなければならないことです。
◇トラウマを治すための基本◇
・同じ時間に起きる
・日光を浴びる
・栄養バランスを考えてしっかり食べる
・体を動かす
・お風呂に入る(リラックス)
このように規則正しい生活がトラウマを治すために必要な土台となります。
トラウマを治すのに効果的ではないこと
反対に、下記ような生活習慣が続くと精神不安定につながり、トラウマを治しにくくします。
◇トラウマを治す時にしてはいけないこと◇
・アルコールや薬物
・ひきこもる
・長時間労働
・テレビやゲームに没頭
・むちゃ食い
・リスクの高い行動
・睡眠をおろそかにする
・怒りを爆発させる、暴力を振るう
・自分を責める
・トラウマについて考えたり話したりすることを避ける
・楽しい活動を避ける
トラウマを治すためにできること
トラウマを治すための基本は前述した通り、「同じ時間に起きる」「日光を浴びる」「しっかり食べる」「体を動かす」「お風呂に入る(リラックス)」などの、規則正しい生活習慣を続けることが大切です。
これから紹介するものは基本となるものに加えて、トラウマを緩和するテクニックや、フラッシュバックの対処法を具体的に説明していきます。
リラクセーションと呼吸
リラクセーションと呼吸法を身に着けることにより、情緒、心理面の安定を図ります。
具体的な効果としては気分の安定、パニックのコントロール、不安症状の緩和、過呼吸の予防などがあります。
私たちの身体は、浅く早い呼吸をしている時や息を吸ったときに、交感神経が刺激され興奮が高まった状態になります。
反対に、深く穏やかな呼吸をしているときや息を吐くときに、副交感神経が刺激され安定した状態になるのです。
このように、呼吸の仕方次第で自律神経の働きが変わるため、「意識的に呼吸を変えることで自律神経のバランスを調整し、トラウマを緩和していく」のがこの項目の重要な部分となります。
リラクセーションや呼吸法を学んでいくときに分かりやすく、基本的なものは瞑想です。
◇初心者の瞑想法◇
①できるだけ静かなところで座る(座り方は何でもいいが胡坐か結跏趺坐という座り方がよい)
②背筋を伸ばし肩を落としリラックス
③目を閉じても開けてもOK(開ける場合は一点に固定)
④3分間、呼吸を感じる
この瞑想の間、「今日の晩御飯は~」「この次の予定は~」のように呼吸以外に意識が向いてしまうはずです。
瞑想の途中で意識が呼吸以外に向いてしまっても、それに気づき、意識を呼吸に戻す作業を繰り返しましょう。
まずはこのたった3分間、自分の呼吸だけに意識を向けることがいかに難しいかを知ってください。
瞑想を続けるとだんだんと意識のブレが減ってきますが、効果が出てるのを感じるのが難しく、続かずにめげてしまう人もたくさんいます。
まずは3分瞑想から始め、それを3か月から半年続けてみてください。
その期間の中で慣れてきたら瞑想時間を3分→5分→10分と少しずつ長くしていきましょう。
最終的な目標は一日30分の瞑想が習慣になることです。
瞑想の目的はそれた意識に気づき、意識を今(呼吸)に戻すことにあります。
どういうことかといいますと、「瞑想の目的は、自分の意識を無理にコントロールしようとせずに、今に意識を向けることで過去や思考に囚われず、意味ある行動をとれるようになることを目的としている」ということになります。
トラウマを呼び起こす引き金を知る
トラウマを呼び起こす引き金とは、ある出来事にまつわる何かの一部分で、それが現実に入り込んできて過去の出来事を思い出させるものです。
引き金はトリガーとも呼ばれ「Aをしたから、Bが起きてそれがトラウマとなった」この文でいう、Aの部分のことです。
引き金に反応すると副腎が活性化し、嫌な記憶や不快な感情、フラッシュバック、不安、恐怖がよみがえってきます。
トラウマを治そう、緩和したいと思ったとき、まずは引き金にはどんなものがあるのかリストを作ってみてください。
他にも「日記に書く」「絵に描く」など、自分の引き金となるものを表現することで、避ける方法や無力化する方法や緩和する方法を事前に計画できます。
次の項で説明するエクスプレッシブ・ライティングで詳しく説明いたします。
書く(エクスプレッシブ・ライティング)
※注意 過酷で大きなトラウマを抱えている場合、再度トラウマを与える場合があります。
エクスプレッシブ・ライティングとは1980年代に生まれた心理療法で、「自分が体験したネガティブな経験を包み隠さずに書く」というテクニックになります。
エクスプレッシブ・ライティングはストレス対策の筆頭で、数週間から数か月でうつや不安が改善し幸せな気分になる効果があります。
自分がストレスと思うことをどんなに小さいことでもいいのでノートに書きます。
そのトラウマのことを1つでも、それぞれ違うトラウマでもいいので、1日20分、4日間ほど続けてみてください。
慣れてきたら、「本当に自分の心の奥にしまわれていた出来事」「そのストレスが自分に与える影響」や「友人に与える影響」も書き、書き終えたら「それにどんな意味があるのか」、書き終えて「何を感じるのか」も書くようにしていきましょう。
書くことで気持ちをクリアにして、自分のストレスにはっきりした形を与えるということが重要です。
フラッシュバックの対処
フラッシュバックとは過去の記憶が現在の記憶に混入してきて、その出来事が実際に今ここで起こっているかのようになることを言います。
フラッシュバックは、トラウマになった出来事が突然よみがえったり、生々しい記憶、強い感情を伴うもので、一瞬の場合もあれば、一部始終がよみがえることもあります。
フラッシュバックはあなたに実際にダメージを与えるものでも、記憶をものでもなく、一時的に”今”から思考が離れ過去に戻ってしまうものです。
瞑想は”今”から離れてしまった意識を”今”に戻すためのトレーニングとも言えます。
よってフラッシュバックを緩和させたい場合は、普段の瞑想トレーニングが役に立つでしょう。
ここからは瞑想以外でフラッシュバックに対処する方法を紹介します。
◇フラッシュバックを思い出し、書いていく
ここでもエクスプレッシブ・ライティングのテクニックが有効となります。
以下のことを考え、書き出してみましょう。
・自分に起こったフラッシュバックは、いつどんな時に起こったのか
・これまでに同じようなフラッシュバックはあったのか、それはいつどんなときか
・フラッシュバックにはどんなにおいや音や感覚があったか
・実際に起きたトラウマはどんなにおいや音や感覚があったか
・実際のトラウマとフラッシュバックにはどんな相違点、類似点があるか
・トラウマを抱えたときと今の生活ではなにが違うか
・支えになってくれる人はいるか
・フラッシュバックが起こった時、どんなことをすると気持ちが楽になるか
・そのフラッシュバックはただの古い記憶で、今の自分を危険にさらすものなら、自分にどのような言葉をかけるか
・フラッシュバックから現実に戻るためにどんなことができるか
◇フラッシュバックにその場で対処する方法
・繰り返し強く瞬きする
・体の姿勢を変える
・深呼吸する
・想像力を使い心の中で安全な場所に行く
・現実で安心できる場所に移動する
・その場で活発に動く
・自分の周りにあるものの名前を声に出して言う
・安全を感じられるものを握りしめる
・心が落ち着く音楽を聴く
・手をたたく
・足踏みする
・冷たい水で顔を洗う
・フラッシュバックの内容を書きだす
脱フュージョン
トラウマを緩和する方法として「脱フュージョン」というテクニックがあります。
これは自分の思考で脳にアプローチする方法です。
◇フュージョンとは何か
まず初めにフージョンについてお話します。
心理療法で用いられるフュージョンとは「自分の中にある思考と実際の出来事が混同してしまっていること」です。
簡単に言いますと、実際にはそうではないかもしれないのに「自分は○○だ」と決めつけてしまっている状態です。
自分の思考は真実な時もあれば、間違っている時もあるのです。
◇フュージョンしてしまっている場合
・思考を今ここで実際に起きた現実のように感じる
・思考を真実であると信じ込む
・思考を真剣にとらえ、最大限の注意を向ける
・思考を命令と考え、自動的にそれに従う
・思考を賢い、全知であると考え従う
・思考に脅迫されている
・「自分は○○だ」という思考を信じている
トラウマを思い出すことによって、「自分はダメな奴」という考え、思考になってしまうことは自分にとって何も役に立ちません。
このように自己批判の思考は、行動の動機にはならず、罪悪感、怒り、うつ、不安などの感情を起こさせてしまいます。
◇脱フュージョンとは
言葉の通り「フージョン状態を脱すること」、これを脱フュージョンと呼びます。
勘違いしてはいけないことは脱フュージョンは不快な感情やイメージを取り除いたり、コントロールするようなテクニックではありません。
脱フュージョンとは「自分の思考を観察し、それを単なる言葉や絵として捉えることで注意を反らし、豊かな人生を送るには何をすればいいのかに注意を向けることができるようにするためのテクニック」です。
例えば、「怖いだろうな…」「痛いだろうな…」という恐怖の感情がわいてきたら「いや待てよ、この恐怖の先には成功があるのではないか」という成長のサインや、恐怖を成功の前兆として捉えることができるようにするためのテクニックです。
これから紹介する”脱フュージョンのテクニック”は一般的なスキルと変わらず、練習すれば練習するだけうまくなっていきます。
一日に5回から10回試してみましょう。
その思考は自分のためになるかという問いが大切です。
◇脱フュージョンしている状態
・思考やイメージが単なる言葉、絵以上のものではないことを理解している
・この言葉や絵が現実の自分を傷つけることはないと知っている
・それらの思考やイメージが自分の助けになる場合だけ注意を向ける
◇脱フュージョンのテクニック
『観察法』
観察法は「自分は○○だ」という思考を「自分は○○だという思考を持っている」という思考に変換します。
失敗したイメージが思い浮かぶ場合、「自分は○○で失敗したというイメージを持っている」という思考に変換します。
失敗したイメージを切り取って名前を付けると、より効果的なテクニックになります。
『不真面目法』
①トラウマやネガティブな思考に十秒間注目してみましょう。
②その思考は自分にどのような影響を与えているか観察します。
③アニメの濃いキャラクターを選びます。
④トラウマやネガティブな思考を思い出し、そのキャラに自分の思考を喋らせてみてください。
練習後ネガティブな思考はそれほど真剣に捉えなくなっているはずです。
クスクス笑っている自分に気づくかもしれません。
人生における重大な問題を軽く扱ってしまうように感じる場合はこのテクニックは適切ではありませんので注意してください。
『ビデオクリップ法』
トラウマやフラッシュバックのイメージを思い浮かべてみましょう。
それを想像の中でテレビの画面に映し出します。
動いていないイメージなら、回転させたり、上下を逆さにしたり、横に引っ張ったりしてみてください。
それが映像として動いているなら、スローモーションにしてみたり、倍速にしたり、白黒にしてみてください。
「ビデオクリップ法」のテクニックはトラウマを消し去ろうとせず、無害なものとして見ることができるようになるのが目的です。
これを1回しても、まだ恐怖や不安が頭を占領する場合、一日5分ほど毎日やってみましょう。
消去学習
※注意 過酷で大きなトラウマを抱えている場合、再度トラウマを与える場合があります。
これをしたら失敗するという、行動とネガティブな現象をつなげて覚えているから、恐怖心の反応が起きてしまうのです。
消去学習とは「○○をしたら失敗する」というものを「○○を体験しても失敗しない」という失敗しないような体験を続けることで、毎回いやな結果を及ぼすわけじゃないんだよということを脳に教え込むテクニックとなります。
自分のトラウマとなったトリガー(失敗の元)を想像してみましょう。
恐怖のきっかけとなるトリガーを探して、そのトリガーだけを想像してください。(失敗体験は想像しない)
失敗のきっかけを想像すると恐怖を感じるけど、実際は何も起きないという体験ができます。
これを何度もやるだけでトラウマを乗り越えることができるのです。
自分の失敗のトリガーを想像するだけでパニックや過呼吸になる人は、自分ではない誰かに置き換えて想像してみてください。
失敗の思考から少し距離をとってあげることで恐怖は軽くなります。
暴露療法
※注意 このテクニックは反対にトラウマが強くなってしまう可能性があります。このテクニックを実践する場合は徹底的に行ってください。中途半端なイメージングは逆効果です。
- 絶対に起きないような最悪な状況をできるだけ詳しく鮮明にイメージする
- 不安な感情を5分間感じる
- 毎日やる
この工程を毎日やることで、実際に恐怖を感じる場面に出くわしても「なんか大したことないな…」と毎日考えていた想像が馬鹿らしく思えるようになります。
最悪な状況を事前に考えることは恐怖に対抗する時、絶大な効果を発揮します。
注意するべきことは本当に馬鹿らしく思えるようになるまで続けないと、恐怖が増す可能性があります。
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